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今節の見どころ

美学と美学の激突。つなぐスタイル同士、より自分たちを表現して上回れ

 

前節の讃岐戦で6試合ぶりに勝利したあと、中3日でメンバーを入れ替えて臨んだ天皇杯2回戦・町田戦で4得点を挙げて勝利。さらに中3日で25日に行われる明治安田J2第20節、チームはアウェイで群馬と戦う。

 

辛抱強くスタイルを構築する者同士の対決

 
今節の対峙は、いつも以上に少し特別な意地のぶつかり合いになりそうだ。
 
大分と同じく群馬も、3-4-2-1システムで最終ラインからビルドアップするスタイルに今季から挑戦。シーズン序盤から結果が出ずに苦しんでいるが、それでもブレることなくコンセプトを貫きながら、じりじりと戦術浸透を進めている。
 
そのスタイル構築に取り組むのは今季就任した森下仁志監督。片野坂知宏監督の1歳下で、現役時代の2000年から翌年にかけて、わずか1年ほどではあるがG大阪でチームメートだったことがある。かつての同僚との対戦について、指揮官はこう話した。
 
「激しく熱いヤツなので、監督になっても選手に激しく闘う姿勢を求め、ハードワークするチームを作る。今季はつなぐサッカーにトライして、自分たちの形を作ることを積み重ねている。われわれも自分たちのスタイルを貫いている中で、どちらが自分たちの形をより出せるかというのが今節はカギになる」
 
辛抱強く貫く厳しさや難しさを知っているだけに、譲れない思いはひとしおのようだ。
 
また、メンバーを入れ替えて臨んだ21日の天皇杯2回戦で町田に4-2で勝利したことも、チームに少なからぬ刺激をもたらしている。「いまはリーグ戦には僕たちが出場しているが、レギュラーポジションは安泰ではない。それを良い方向へとつなげるためにも、自分たちが出た試合では勝たなくてはならない」と、鈴木惇は気を引き締めた。
 

結果は出ていないがコツコツと上向きな群馬

 
4勝1分14敗で21位に沈む群馬。第12節A熊本戦で今季初勝利を遂げると、次のH愛媛戦には0-3で敗れたが、そこからH山口戦、A讃岐戦、A福岡戦で3連勝。
 
3月から練習参加し、5月12日に加入が発表された元韓国代表FWカン・スイルと、今季14得点のうち8得点を挙げている高井和馬がこれまでの得点力不足を解消し、5月は4勝1敗。辛抱強く浸透させてきた戦術がようやく結果につながった。
 
だが、6月に入ってからは徳島、山形、松本に3連敗。ロングボールを蹴らされてスタイルを表現できなかったり、カン・スイルと高井を抑えられたりと苦戦している。
 
前節・松本戦を左足の痛みで欠場したカン・スイルが、今節出場できるかどうかはまだ微妙なところ。また、前節、主審への侮辱行為を行なったとされ退場処分となった山岸祐也は出場停止。トップやボランチ、シャドーと多彩なポジションで出場し、ゲームキャプテンを務めていた山岸の欠場は大きい。
 
山岸の代役をどのポジションに入れるかによっても、予想布陣は変わってくる。ボランチに展開力があり守備も強い松下裕樹や、攻撃的な鈴木崇文を入れる可能性もあるし、前線ならば天皇杯で活躍した石田雅俊の出場も見込まれる。石田は京都時代の2014年J2第27節H大分戦でプロ初ゴールを挙げており、大分に対するイメージも悪くないはずだ。
 
また、シャドーで出場を重ね高い攻撃力を誇る岡田翔平も、湘南在籍時の2014年J2第8節、H大分戦でJ2初得点を挙げている。
 
どの戦力を起用するにしても、攻撃では後方からビルドアップし、守備では前線からアグレッシブに奪いに来るスタイルを貫いてくるだろう。
 

美学を貫き、内容でも結果でも上回りたい

 
同じシステム同士のミラーゲームを制するカギは、デュエルで負けないこと。ただ、負けまいとして無闇に激しくぶつかるのは、そこで抜かれてしまう危険性を考えれば逆効果だ。特に細やかにパスをつないでくる群馬に対しては、予測や判断で上回ることが有効になる。
 
まずは群馬の得点力のある攻撃陣を抑えなくてはならない。出てくるかどうかはわからないが、カン・スイルや高井や岡田に自由に仕事をさせないようにしたい。相手がボールを持っている時間帯には、高い位置でブロックを作り、ボールの出どころも抑えながら、組織で対応していくことが求められる。
 
攻撃においては、相手の激しいハイプレスをかいくぐりながらボールを動かしていけるかどうかが問われる。ミスでひっかけられてしまえば、守備陣形が整う前にカウンターを食らう危険性もある。ビルドアップにおいては互いに判断とプレーのクオリティーを競うことになりそうだ。
 
最近はクロスからのチャンスが増えており、群馬の守備にも横方向から揺さぶりをかけたいところ。両WBの主導権争いで勝って相手を押し込み、分厚い攻撃を仕掛けたい。後藤優介は「サイドからの攻撃が有効だが、逃げずに真ん中を突けるときは突く気持ちで、中も突いていきたい」とアイデアの必要性も説く。
 
前節が土曜で今節は日曜開催であることから、チームはミッドウィークにオフを挟む変則的なスケジュールを組み、そこから中3日で通常のルーティンによる準備を行った。その変則スケジュールが試合にどう影響するか。また、羽田空港からバスで2時間強、渋滞の程度によっては移動の負担も増す北関東アウェイで19時30分キックオフという条件も、多少ナイーブな材料ではある。
 
いかなる条件にも屈することなく、似通ったスタイルの相手を内容でも結果でも上回りたい。これは美学と美学の激突だ。