強烈な攻撃力と堅守を誇る相手に、チームの成長を問う一戦
チームは5試合ぶりの勝利を目指し、10日、明治安田J2第18節H横浜FC戦に臨む。強烈なFWを軸とした高い攻撃力で2位につける相手だが、粘り強く守りながら好機を仕留めたい。
戦術のブラッシュアップを図った1週間
勝てる試合で勝ち点を取りこぼしている感の強い4試合。狙いどおりに攻撃の形を作れる場面もあれば、ほとんどの時間帯を粘り強く守ってもいるのだが、決定機を逃し、ミスを突かれて失点する試合が続いている。
決定機を逃した精度不足も、失点につながったミスも、個人の課題であると同時に、組織で修正していかなくてはならない要素もはらんでいる。チームは今週のトレーニングで、浸透しつつある戦術のさらなるブラッシュアップを目指し、意欲的に細部のすり合わせを行なった。
ミーティングで水戸戦のフィードバックがなされた週の立ち上げの日には、練習後に山岸智キャプテンが片野坂知宏監督に、選手の距離感やスペースの使い方について選手視点からの意見を提示。川西翔太は吉村光示ヘッドコーチに、相手の剥がし方や数的優位の作り方について訊ね、その周囲には他の選手たちも加わって、それぞれのポジションから意見を述べ合った。
片野坂監督からは、「ボールを回す意図」「チームとして意思疎通すること」「距離感と臨機応変な判断」といったコンセプトの要点が、あらためて整理され伝えられたという。
相手に研究され対策されることは、自分たちでは気づかない弱点を教えてもらえる、成長への絶好の機会となる。
試合前々日のトレーニング後、川西は「ああやって話したことによって、今日の紅白戦でも、チームとしての意図や目線がちょっと変わってきた。ハマらなかったときや上手く行かなかったときに自分たちで考えてプレーすることが大事」と、成長への足がかりを踏みしめた。
迫力満点、リーグ得点王イバと仲間たち
チームがステップアップを図って苦しんでいるこのタイミングで、今節ホームに迎えるのは、今季好調の横浜FC。
第10節から採用する3-4-2-1システムの頂点に君臨するのは、モロッコ出身・ノルウェー国籍の190cmストライカー・イバだ。現在11得点で福岡のウェリントンと並ぶリーグ得点王タイ。テクニックも誇る強烈な存在で、コンタクトプレーでファウルを誘い、PKを獲得するのも得意な厄介者だ。
このイバを軸に、野村直輝や津田知宏といったスピードと機動力を持つ攻撃陣が、流動的に絡んでくる。ハードワークを得意とするボランチの佐藤謙介・中里崇宏の攻撃参加も抑えなくてはならない。
さらに、イバと大久保哲哉のツインタワーというオプションもある。対戦する側にとっては“暴挙”としか言いたくないパワープレー感だ。
また、リーグ3位の得点力を叩き出す一方で、リーグ最少失点、得失点差でもリーグトップの堅守のチームでもあることを忘れてはいけない。元オランダ年代別代表のカルフィン・ヨン・ア・ピンを中央に配し、強度の高い守備陣が並ぶ。
ポジショニングの改善が試合の中で発揮できるか
両ゴール前に迫力と特長を持ち3-4-2-1システムを敷く、ここまで苦手としてきたタイプのチームだが、ここで腰が引ければ惨敗する可能性も否めない。
まずは相手の強烈な攻撃を抑えなくてはならず、ここでカギとなるのがラインの高さ。起点となるイバを出来るだけゴールに近づけたくないところではあるが、機動性の高いシャドーのウラ抜けも警戒しなくてはならず、状況を見ながらのラインコントロールが求められる。
出来ることならイバにボールが入る前にこちらの攻撃へと切り替えたいところ。守備で相手に自由を与えないためにもだが、攻撃に切り替わった瞬間に自分たちの狙いを出すためにも、前線から連動しながら距離感を保つことが重要だ。
特に最近は構えて守備をする試合が多かったため、攻撃に切り替わったときに前へと出ていくのが難しくなっていた。不用意な失い方をしてカウンターを受けることも多く、攻撃の肝である最終ラインからの攻撃参加をしづらい状況が続いていたのもある。
そこでリスクマネジメントは継続しつつ、状況によってはリスクを冒して攻撃するためのポジショニングについても話し合いが持たれた。チームが最優先に狙うファストブレイクを発動するためには欠かせない要素となる。
そこからつながる攻撃に関しては、連係を駆使した崩しが有効になるだろう。上手く相手を動かして空いたスペースを使い、決定機を演出したい。
コンセプトを再確認しながら次なるステップへと進みはじめたチームが、今節、強豪を相手にどこまでその成果を出せるか。決定力の高いストライカー・林容平の離脱は痛すぎるが、他の負傷離脱者も徐々に復帰しそうだ。出場メンバーが、林をはじめとするリハビリ中の仲間の分まで、気概を見せてくれるだろう。