TORITENトリテン

今節の見どころ

連戦最後の試合は因縁の野津田で。平常どおり全力で戦い、コンパクトな相手のスペースを突け

 

21日に開催される明治安田J2第15節A町田戦で、今季2度目の3連戦もようやく終わる。立て続けの連戦に疲労も蓄積されているはずだが、チームは前節の流れを断ち切るためにも、全力で勝利を目指す。

 

3週間で6試合の連戦最後の試合

 
前節の長崎戦は、苦しい時間帯をしのいで良い展開に持ち込みながら、終盤のPK2本で逆転負けという不本意な結果となった。試合後の選手たちの表情からは疲労とショックが読み取れたが、中3日で迎える次の試合に向けて、きちんと切り替えも完了した模様。連戦であることを味方につけ、フレッシュな気持ちでアウェイへと乗り込みたい。
 
新たな負傷離脱者が出る一方で別メニュー組が復帰したりと、戦力のやりくりに工夫が必要な状況が続いているが、川西翔太や國分伸太郎ら複数ポジションをこなせるメンバーが出場できる状態にあることで、片野坂知宏監督の選択肢もわずかに幅を持っている。
 
今週は全国的に気温が上昇し、午前のグラウンドにも強い陽が降り注いだ。4月29日にスタートした3週間で6試合の連戦も最後の試合となり、心身の疲労も蓄積されている。また、アウェイ連戦となる今節の町田市営陸上競技場までは、羽田空港からの渋滞度合によっては移動の負担が増えることも考えられる。
 
短い調整でトレーニングを終え、選手たちは綿密なケアをほどこして、コンディション回復に努めた。
 

コレクティブな町田。大分ゆかりの選手もカギに

 
町田を率いる相馬直樹監督は、2010年に当時JFLに所属していた町田の監督に就任。W杯を経験した日本人選手の中で最初の監督就任者となった。リーグ3位に導き、翌年は川崎Fで指揮。12年4月に解任されると13年は山形でヘッドコーチを務め、14年に監督としてJ3町田へと戻ると、15年に大分との入れ替え戦を制してJ2昇格を遂げた。
 
チームはコレクティブな4-4-2システムでアグレッシブに戦い、前線から激しく連動したプレスをかける。コンパクトな距離感で球際に人数をかけて相手の短いパスを奪い、攻撃へと切り替えるスタイルだ。球際強く切り替えが早い。ボールを奪うと前を向く姿勢も徹底されている。
 
2トップには中島裕希と吉田眞紀人を据える。自由にさせると自ら仕掛け、あっというまにシュートへと持ち込む力のあるFWだ。トップに入ったりSHに入ったりする戸島章は逆サイドからのクロスに合わせて相手ゴールを脅かす。いろいろなチームで対戦するたびに勢いある突破が脅威となる谷澤達也は、前節の名古屋戦で得点している。
 
中盤でハードワークし素早い縦パスを供給するのが、大分育ちのボランチ井上裕大。チーム内でのキャラクターは大分時代のままのようだが、長崎を経て町田へと遺跡して出場経験を積み、ダイナモとしてチームに勢いを与える重要人物となっている。経験豊富な李漢宰と組むダブルボランチは強力だ。
 
最終ラインは今節、2人のレギュラーを累積警告で欠くこととなった。ここまでCBでフル出場しているキャプテンの深津康太と、左SBの松本怜大だ。精神的支柱とクロスの供給元が不在となったところへ、誰が出てくるかも気になるところ。
 
深津とCBを組んでいる増田繁人が「大分は僕にとって特別な思い入れのあるクラブ。深津さんのいないぶんは自分がチームを引っ張る」と気合十分なようだ。ともに古巣戦となるはずだった土岐田洸平は残念ながら負傷中。大分生まれでトリニータU-15から静岡学園を経て立命館大でキャプテンも務めた戸高弘貴も在籍し、大分ゆかりの選手が多いチームでもある。コーチングスタッフには小林亮もいる。
 

サイドチェンジを有効に使いたい

 
大分のサポーターにとって何よりも町田は、15年J2・J3入れ替え戦で敗れた相手として、絶対に負けたくないチームだろう。野津田のスタジアムに行くのもあの忘れがたい第1戦以来となる。
 
ただ、こちらはあのときのチームとは、監督もスタイルも全く変わっている。入れ替え戦に出場していた選手もほとんどいない。そういった意味も踏まえて、入れ替え戦当時はピッチの外から見守るしかなかった上福元直人も「負けられないという人たちの思いも背負いながら、自分たちはいつもどおりに全力を尽くして臨む」と平常心を説く。いまはむしろ、前節の流れを断ち切ることのほうが肝要だ。
 
「長崎戦の敗戦のショックを払拭してここで良いゲームをしないと、次からも岡山、水戸、横浜FCと、上位に行くか下位に行くかという大事な試合が続く」と、指揮官も言う。
 
相手がこれまでどおり4-4-2システムで来ればミスマッチが生じる噛み合わせ。主導権を握って数的優位を作りながら攻めたいが、逆にミスマッチを突かれないよう集中してスライドすることも忘れてはならない。コンパクトに寄せてくる相手に対しては、大きなサイドチェンジが有効になるだろう。最近は戦術が浸透してスペースを見極めた好機演出も増えており、鈴木惇や竹内彬の展開力にも期待したいところ。
 
さまざまな因縁や思いも渦巻くだろうが、チームが目指すのは目の前の一戦一戦を大事に戦い、コツコツと勝ち点を積み重ねること。その底力を信じて、今節も見守りたい。