多士済々で選択肢豊富な名古屋との戦いは、瞬時の駆け引きと判断がカギに
またハードな3連戦がはじまる。13日に開催される明治安田J2第13節で、チームは大銀ドームに強敵・名古屋を迎え撃つ。
GW3連戦で見えたチームの成長と真髄
GW3連戦は1勝1分1敗の勝ち点4。選手たちは「最低限の結果」と口にしつつ、ホームで勝てなかったことを悔しがる。今節、ホームで3試合ぶりの勝利を目指し、芝の養生を終えたグラウンドでトレーニングに打ち込んだ。
この3連戦はチームのポテンシャルや奥行きを見せてくれたように思う。京都戦ではなすすべなく個の力に屈したが、次の松本戦ではこれまでと違い構えた守備から攻撃につなげた。さらに次の岐阜戦ではシステムを4-4-2に変更し、メリハリの効いた守備から鋭いカウンター2発で勝機を仕留めた。
いずれも中3日という短い準備期間でチームが一体となって戦術を遂行している。これが可能となった原動力としては、昨季から積み上げ続けた片野坂知宏監督の哲学の浸透と、山岸智や竹内彬ら経験豊富な戦力による牽引が大きいようだ。
相手の長所を消すために戦術の目先は変えながらも、根底を貫くものはブレないからこそ、対相手の戦術がスムーズに体現できるのだろう。最終ラインからボールをつなぐことだけがクローズアップされがちだが、それは単なる表面的な現象に過ぎない。そうやってボールを動かすことで、いつのまにか相手をこちらのペースへと巻き込んでいくのが、片野坂サッカーの真骨頂だ。
個々の戦力の成長もそれを支える。京都戦で闘莉王を上回ることが出来なかった福森直也は「あの失点が自分の基準を上げることにつながった」と話した。J2で対戦する相手の個の強さを体感し、それに対応していくために自らのレベルアップに取り組んでいるという。
形があるようでないような風間グランパス
今季から風間八宏監督が指揮を取る名古屋は、これまでとはまったく異なるチームになった。昨季までJ1で戦い、まさかの“びっくり枠”で降格してきたビッグクラブだ。
監督が代わり、戦力も大幅に入れ替わって、風間サッカーはいまだ構築の途上。第6節・熊本戦で5得点、第10節・群馬戦で4得点、他の5試合で2得点ずつと複数点が多く、ここまでで21得点と得点ランキングではトップに君臨する。その一方、千葉、徳島、山口には2失点を喫し、失点数は13と下から数えたほうが早い順位で、それにより勝ち点を取りこぼしている印象だ。
それでも3位につける地力はさすがとしか言いようがない。5得点でチーム得点王の永井龍は、古巣戦を前に残念ながら負傷離脱中だが、4得点のフェリペ・ガルシア、199cmのシモビッチ、経験豊富な玉田圭司、岐阜や岡山在籍時にも大分のゴールを何度も脅かした押谷祐樹と、バラエティー豊かな攻撃陣が名を連ねる。さらに今節は、キャプテンの佐藤寿人も負傷から復帰してきた。
中盤にも、昨季大分をJ3優勝へと導いた八反田康平をはじめ、市立船橋高時代から注目されてきた和泉竜司、強度のある田口泰士と、怪我人を除いても多士済々。サイドにも内田健太や宮原和也ら勢いのあるメンバーが並ぶ。
これらの選択肢を、試合ごとにシステムや組み合わせを変えながら使い分けている名古屋は、どう出てくるかがまったく読めないチームの筆頭だ。特徴ある戦力を配置したところで、個々の戦力がそのときどきの判断で流動的に動くため、「攻めの形」というものも把握しづらい。片野坂監督も「形があるようでないようなチーム」と警戒を強める。
攻めさせて刺すか、動かして崩すかは状況次第
「ただ、メンバーややり方は変わったりしているが、キーになる選手はおそらく変わらない」と、指揮官はポイントを押さえる。「われわれがしっかりと良い守備から良い攻撃を繰り出し、相手の守備に遭ったとしても、その変化を上手く突いていけるプレーが出来れば」。
先発メンバーを確認し、ピッチでシステムと誰がどのポジションかを確かめるところからがスタート。バイタルエリアで相手に前を向かせないようにポイントを押さえる守備は、前節の岐阜戦と同様、瞬時の判断とメリハリを要する。
どのような試合展開になるかは、実際にフタを開けてみなくてはわからない。相手も瞬時の判断でプレーを選択する能力に長けたメンバー揃い。ピッチでは個々の局面でも大局でも、息詰まるような繊細な駆け引きが繰り広げられるだろう。
攻めさせて刺すか、動かして崩すか。いずれにせよ、こちらにも選択肢はある。「どちらかというと僕も攻撃が好きなので、こちらも攻撃的にやれればいいなと思うのだが。相手を動かしたり走らせたりする自分たちの時間を、前回の岐阜戦よりは増やしたい」と指揮官は言うが、名古屋がそれを許してくれるかどうか。
ピッチに流れる空気を読みながら、選手たちがどう判断して戦うかが、今節の最大の見どころとなりそうだ。
自身がプロデビューしたクラブとの古巣戦となるディフェンスリーダーの竹内彬、復帰してくる可能性がある佐藤寿人とのキャプテン対決を待ち望む山岸智と、個人的な思い入れを胸に秘める2人がいることも、最後に書き添えておきたい。