厳しいマークを剥がせるか。好調の難敵・金沢相手にも自分たちのサッカーを貫く
チームは15日、大銀ドームで開催される明治安田J2第8節・金沢戦に、3試合ぶりの勝利を懸けて臨む。14時キックオフ。
前節の疲労も残しつつ3日間の練習に集中
「試合中に凍えていた」と選手たちも苦笑いした前節・アウェイ山形戦。翌朝9時にホテルを出発したが、霧のため大分自動車道が一部区間通行止めとなり、14時半のクラブハウス到着予定が大幅に遅れて、想定以上にハードなアウェイ遠征となってしまった。
そんな前節から中5日で迎える今節。移動日と1日のオフを除けばトレーニングに充てられる期間は3日しかない。
疲労が残っている様子で、13日も選手たちの動きには重さが見えた。別メニューから復帰してきたメンバーについても「まだキレがなく試合勘にも不安がある」と、片野坂知宏監督は起用に慎重だ。
いまは1日も早くチームの「型」を定めていきたい時期。少ない準備期間で自分たちのコンセプトにそって積み上げながら、対金沢の戦術を確認しなくてはならない。
非公開で行った紅白戦ではサブ組が金沢の特徴を再現してシミュレーションしたが、練習後の指揮官は難しい表情。「しっかり判断してプレーしなくては痛い思いをすることになる」と、いつも以上に厳しい戦いを予想した。
相手により守備のハメ方を変えてくる金沢
開幕以来5戦勝ちなしと苦戦していた金沢だが、ここに来て戦術が浸透してきたようで2連勝中。特に前節・岡山戦は、互いの長所を潰し合う殺伐とした展開の末、90+3分にFKから1点を挙げて劇的勝利を遂げた。勢いに乗る流れのままに大銀ドームへと乗り込んでくる。
ハードワークが信条で、前線から激しくプレッシャーをかけてくる戦法。最終ラインからビルドアップするスタイルのチームは格好の餌食で、寄せの勢いで相手のミスを誘い、かっさらってそのままゴールへと向かう。第4節・長崎戦、第6節・群馬戦では実際にその形から得点を挙げた。
システムは3-4-2-1と4-4-2を併用。ミラーゲームにすることもあればミスマッチを作ることもあり、どうやら守備のハメ方で使い分けているのではないかと思われる。大分はこれまで3バックのチームに対して結果を出せていないが、4バックでハメてくる可能性も高い。
柳下正明監督は新潟で指揮をとっていた頃に、今季の大分がモデルとする広島や浦和と対戦を重ねており、「ウチがやろうとしていることに対する守備の仕方もわかっている」と片野坂監督。たとえ4-4-2で来たとしても、プレッシャーのかけ方やハメ方、遅らせ方やスペースの消し方などが、ここまで対戦してきた4-4-2のチームとは異なっており、単純にミスマッチを突けばいいというわけにはいかない。厳しいマンマークを剥がして前に進めるかどうかが問われる。
攻撃では軸となる佐藤洸一へのシンプルなクロスが多く、そこにドリブラー中美慶哉や杉浦恭平、大槻優平と勢いのある攻撃陣が絡んでくる。クロスから失点が続く大分に対し、ダイアゴナルの動きを交えながらそこを狙ってくることは間違いない。
勉強代を払うリスクを負ってでも
現時点での順位こそ16位だが、そんな“曲者”金沢との戦いは難しくなると思われる。ハイプレスに苦しんだ第5節A熊本戦では相手のミスにも助けられて失点せずに済んだが、そうそう甘いものでもない。
だが、チームのスタイルを確立したい指揮官は「僕はそういう相手でも、しっかりつないでひっくり返して上回りたい」と意志を貫く。ここで逃げては、チーム作りの芯がブレてしまう。「勉強代を払う」リスクを負ってでも、曲げてはならないものがあるということだ。
紅白戦後には三平和司も難しい表情を見せた。「相手がプレスに来ていれば早めに落としたりさばいたりしなくてはならないが、来ていないときにどれだけ前を向けるか。それを判断してプレーすることが大事になる」。
コンビネーションによる崩しのバリエーションを増やそうと、新たなオプションも試した。指揮官の感触をその表情から察すると、選択肢としては悪くはなさそうだ。90分のプランの中で、今節、それを使う場面が出てくるかどうか。
勝利へのカギは、まず相手のプレスを落ち着いていなすこと。ワンタッチやフリック、ドリブルでの持ち出しなどで連係して厳しいマークを剥がし、決定機を仕留めたい。
「まだチームとしても個人としても上手く行かないこともあるが、これをブレずに続けていくうちにもっと良くなっていくと思う。そうやって成長していく姿を、サポーターに見せたい」と話すのは小手川宏基。指揮官の高い要求にトライしていく充実感を感じながら、選手たちは今節に臨む。