【インタビュー】DF 2 山口貴弘「新しいスタートを切りたい気持ちが上回ったので決断した」
07年に湘南でプロデビューし、13年から2年間は長崎でプレーしたあと、15年に大分に加入。職人気質のCBは、明治安田J3降格と1年でのJ2復帰という激動の時期を過ごしたのを最後に、今季かぎりで11年間の現役生活にピリオドを打つことを決めた。Jリーグ通算257試合出場8得点。試合に絡めない時期もいつも真摯だった守備のスペシャリストが、ユニフォームを脱いで新たな道へと歩を進める。
次への思いを封印しながらプレーオフを目指してきた
——現役引退を決意されたとのことですが。
はい。理由はいろいろあるんですけど、最終的には、選手を続けるより次の新しい道に興味を持って、新しいスタートを切りたいという気持ちが上回ったので、決断しました。今季がはじまるときに、「今季、個人としてある程度の結果が出せなかったら…」という思いがあったんです。
1、2ヶ月前はちょっと悩んで考えたんですけど、後悔はないですね。いちばん悩んだのはもう二度とプレーヤーとしてピッチに立てないというところ。そこの整理だけ、していました。完全に決断したのは、プレーオフの可能性がなくなったときです。チームとしてプレーオフを目指している中で、自分も選手としてそこを目指したいと思っていたので、次の道への思いを封印しながらやってたんですけど。
まだ残り1試合あるので、そこをやりきって、チームとして良い締めくくりを迎えたいと思います。
——新しい道とは。
まだはっきりとは決まってないんですが、サッカーに関わりながら。いまのところ自分では指導者に興味があります。
昨季のJ3優勝がプロ初のタイトルだった
——湘南、長崎、そして大分と3つのクラブでプレーしてきましたが、11年間の中で思い出に残っていることは。
いやー、わからないな、いっぱいありすぎて…。
——湘南から長崎に完全移籍するときにサポーターが奪い合ってまとめサイトにまとめられたり(笑)。
ありましたね、出てましたね、懐かしいですね(笑)。J1昇格、J2昇格、J3降格だったり、いろいろ経験させてもらって、良い経験になりました。タイトルを獲ったのは、昨季のJ3優勝がプロになって初めてだった。カテゴリーは下でしたけど、うれしかったですね。
だって、あのときはギリギリでしたからね。みんなで力を合わせて1年でJ2に戻れて本当に良かった。僕が大分に来て1年目でJ3に落として、それで終わっちゃったら最悪じゃないですか(笑)。なんとか最低限のことは出来たかなと。自分としてはあまりチームに貢献できなかったという気持ちのほうが強かったんですけど、みんなでJ2に戻すことまでは出来たので、そこがいちばんの思い出かな。
みんなと一緒に成長したいという気持ちだけで
——修行選手が「ぐっさんは1点を守り切らなきゃいけない状況になると生き生きする」と言っていたことがあります。
そんなことはないですけど、そんなふうに見えるんでしょうね(笑)。途中から出て試合を閉めるという役割を良く課されていたので。あんまり器用なタイプじゃないので、はっきりとそれだけの仕事にこだわったほうが、力を発揮しやすかったのかもしれません(笑)。
——山岸選手が「ぐっさんがサブ組にいてくれるから若手を引っ張って練習試合も緊張感を保ってくれる」と言っていた時期もありました。
いや、別に、みんなでやるものだし(笑)。サブ組がモチベーション的にもメンタル的にも難しいのはみんな同じなので、その中でも、とにかく自分もみんなと一緒に成長したいという気持ちだけで。若い選手も多かったので、どうやったらいちばんチームのためになって、どれだけ成長できるかなということを考えながら、みんなと試行錯誤しながらやってきた感じです。
——そのサブ組が中心で戦った天皇杯2回戦・町田戦は素晴らしい試合でしたね。
あの試合は良かったですね。いま振り返れば良いゲームが出来たと思います。いつもやってることしか出来ないけど、そのときは良いコミュニケーションが取れていて、自信を持ってやっていたので。うれしかったですね。
指導者ライセンス講習はプレーの幅を広げてくれる
——高松大樹さんと一緒にB級ライセンスの講習を受けたんでしたね。
そうです。昨年、B級を取得したので。あらためて勉強になりました。選手としてもプラスだったし。そういう意味で、興味のある選手はどんどん講習を受けてサッカーの勉強をしたほうがいいです。プレーヤーとしての幅も間違いなく広がるので。オフが削れちゃうのでちょっと大変ですけど。
——どういう指導者を目指したいんですか。
まだやってないから自分がどれだけ出来るかわからないし。フタを開けてみたら全然楽しくなかったりしてね(笑)。
——影響を受けた指導者を挙げるとすれば。
湘南のときのチョウ(キジェ)さん。ブレない信念があって、ハードワークをベースにしながら選手の成長を促すというところで。
——今後はさらに上級のライセンスも。
そうですね。やってみないと正直わからないところもありますけど(笑)。家族とも話し合いながら頑張っていきます。