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勝利へのカギ

【レポート】U-19代表でアジア制覇を遂げた坂井大将と岩田智輝、その経験を糧に

 

2014年、AFC U-19選手権に臨んだU-19日本代表はミャンマーで北朝鮮代表にPK戦で敗れ、世界大会への道を閉ざされた。そのチームの最年少メンバーだった坂井大将が、今度は最年長でキャプテンとして、背番号10をつけて臨んだバーレーン大会。10年ぶりにU-20W杯出場権を獲得したばかりでなく、アジアでの初優勝という快挙を遂げた。

 

坂井大将、キャプテンとして2年前のリベンジを果たす

 
バーレーン遠征から1日に大分に帰ってきた坂井と岩田智輝。無事に怪我もなくチームに合流してトレーニングしている。
 
キャプテンとしてチャンピオンチームを率いた坂井は「大会を通してチームが成長していった。出場時間の短いメンバーも本当にチームのためにやってくれていた。まとまった、本当に良いチームになっていた」とメンバーに感謝する。帰国した空港で大勢のメディアやサポーターに囲まれて実感が湧いたと笑った。
 
こういった短期決戦での初戦の重要性を、2014年ブラジルW杯にトレーニングパートナーとして帯同したときも、また前回のミャンマー大会でも痛感していた。ブラジルW杯での長谷部誠のキャプテンとしての姿勢を参考に、初戦・イエメン戦の前日、グループLINEで選手全員を集めてミーティングを行う。
 
「何をしにここに来ているのかということ、そして初戦の大切さをみんなに伝えたかったし、みんなの思いも聞きたかった。23人が同じ方向を向いていこうと話した。20分弱だったが濃い話が出来たと思う。いつも一発ギャグなどを欠かさずノリの良いチームだけど、これまでにないくらいみんなが真面目にやってくれた」
 
3歳下で次回大会出場権も持つ中村駿太(柏U-18)と若原智哉(京都U-18)にも気を配った。「彼らは、いわば前回大会での僕と同じ立場。アイツらには下の世代に伝えていく役目があるので」
 
前回大会のU-19を指揮した内山篤監督とのつきあいも長い。選手とスタッフとのパイプ役も務めた。中2日というハードな日程の中で選手たちのコンディションを保てるよう、それぞれの声をコンディショニングコーチに届けたりもした。
 
出場権を獲得して「リベンジが果たせた」と、2年前からのスタッフとも喜びを分かち合った。優勝したときは「持ってる」と思ったという。44年ぶりの無失点優勝で初のアジア制覇。
 
「このチームでキャプテンとして2年ちょっとやらせていただいたなかでいちばん良い遠征だった。一丸となれたのが何よりもうれしかった。個性豊かで我の強いメンバーもいるなかで、日本のチームは組織的に戦うことが強みなので、試合中も組織をまとめようと心がけていた」
 

坂井が自身に見る、一人のプレーヤーとしての課題

 
来年5月にはU-20W杯。その後には東京五輪も控え、A代表へと続いてゆくこの年代の、間違いなく中核として期待を背負う。チームを率いるキャプテンとしての役割は優勝という結果で見事に果たしてみせたが、一人のプレーヤーとしては、まだまだ自らに大きな課題があると気を引き締める。
 
現在のU-19代表ではボランチを務める坂井。これまで最も得意としてきたトップ下とは違い、どの試合でもバランサーに徹しているのだろうか、という印象を受けた。それについて訊ねると、やはり本人も「本当はもっと前に出て攻撃に絡みたかった」と、不本意そうな表情を見せる。
 
「セカンドボールを拾うことと、カウンターへのリスク管理に気が行ってしまって、前に出ることが少なくなってしまったのが反省点。自分が長所を出して活躍するというよりも、チームが勝つためにという方向のプレーになった。結果がついてきたのでなんとも言えないが、もっと前に出たい。もちろん守備もやらなくてはならないから、もっともっと走らなくてはならない」
 
サウジアラビア戦では個の力量の高い相手にセカンドボールを拾われ、ダブルボランチを組んだ市丸瑞希(G大阪)とともにずるずると押し下げられてしまった。「自分で行けるようになりたい」と、得意の周囲との連係だけでなく、個としての自身の強化も目指す。
 

代表での不完全燃焼をJ2昇格にぶつける岩田智輝

 
そんな坂井のことを「いままでに見たことのない姿だった。周囲をよく見てよく気のつく、キャプテンらしいキャプテンだった」と振り返るのが、アカデミーの後輩でもある岩田だ。プレーについても「全体の流れのなかでバランスを取っているのかなと思いながら見ていた。新しい大将くんを見たって感じ」と新鮮だった感触を語る。
 
一方で自身については「でも残念ながら新しい岩田智輝は生まれなかったです。この大会を通じて自分が技術的に上手くなった感じはまるでない」と厳しい言葉。本当は2日はオフだったのだが、「自分は代表でも試合に出ていないし、一刻も早く練習したくて」と休まずに全体練習に合流した。「出れなくて悔しかった。もっとやらなきゃと思った」。具体的には縦パスやクロスの質、判断を高めたいという。
 
「A代表も目指すけれど、目の前のひとつひとつの年代や大会でステップアップしていくことが大事。まずはワールドユースのメンバーに選ばれるよう頑張りたい」
 
宇佐の同郷で四日市南SSCからの先輩であり、同じ右SBを主戦場とする松原健(新潟)に「お前はすぐにA代表までのし上がってくるよ」と言われ「何を根拠に言ってるのかわかんないですけど」と笑う。U-20W杯出場が確定したときにも「おめでとう」と連絡が来たそうだ。
 
U-20W杯出場権獲得と優勝のどちらの瞬間にも自分がピッチに立っていたかった気持ちは強いが、一試合ごとに試合内容もチームの雰囲気も良くなっていくのを、身をもって感じていた。その大きな経験を、J2昇格を目指すチームでも生かしたいところだ。
 
「チームはいま良い流れで来ているので、自分が入ってその流れを断ち切らないように、むしろプラスになるように。U-19代表で一緒に戦ったG大阪のメンバーも今節出場すると思うので、自分も出場して対戦するのが楽しみ」
 
金メダルとともに2人並んでの撮影では「バックアップメンバーも一緒でいい?」と、アカデミーOB仲間でU-19代表に一緒に招集されたこともある吉平翼を呼び寄せた。今季、残り3試合。快挙を成し遂げた彼らが、チームに良い刺激をもたらすことに期待したい。