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勝利へのカギ

【アカデミー通信】今年も灼熱の群馬へ。U-18、激戦を制し全国大会へと駒を進める

 

■最後の一枠を争う、嵐の中の死闘

6月12日、強い風雨にさらされる新門司球場で行われた、第27回九州クラブユースサッカー選手権決勝トーナメント・3位決定戦。大分トリニータU-18は、シーソーゲームの末にロアッソ熊本ユースを倒し、サガン鳥栖U-18、アビスパ福岡U-18に続く九州代表として、第40回日本クラブユースサッカー選手権へと駒を進めた。

負傷者が相次いでメンバーが定まらず、組織構築が遅れた今季。とくにキャプテン・中畑雄太がPUMA CUPで離脱して以降はなかなか勝てず、震災の影響で日程変更もあったプレミアリーグではいまだ勝ちなし。苦しい状況で下を向きがちだったところへ、6月5日、主導権を握りながら鳥栖との準決勝に0-1で敗れ、全国大会行きに黄信号が点る。

九州代表の最後の一枠へと滑り込むために、絶対に勝たなくてはならない決戦直前のミーティング。いまのチーム状態を訊ねられ、「キャプテンが離脱してから勝てていないし、良くないです」と答えた選手たちに、中村監督は伝えた。

「そうだね。確かに勝てていない。だけど勘違いするな。チーム状態が悪いということは、能力が低いとか弱いとかいうことじゃない。これは上昇するための時期なんだ。このあと決勝を戦うチームは、どちらもすでに全国行きを決めている。僕らは3位を勝ち取れば全国行きが決まるという状況で、これは会場が最高に盛り上がるシチュエーションだ。この試合を、自分たちが成長するきっかけの第一歩にしよう。練習でやってきたことを信じれば、怖がらずに力強く踏み出せるはずだ」

中村監督の言葉に背中を押されて、選手たちは荒れた空の下、ピッチへと向かった。

 

■シーソーゲームの末に劇的勝利をつかむ

熊本は立ち上がりから5バックシステムでゴール前を固め、ファウルも辞さない荒々しさを見せる。時折布陣を4-1-4-1に変更しながらカウンターやセットプレーで好機を狙い、なりふり構わぬ気合いで挑んできた。対する大分は、力強くポゼッションしつつ平常心で臨む。

20分に黒木樹生のゴールで先制したが、32分にマークを剥がされて失点し、1-1で折り返す。69分に逆転された1分後、酒井将輝がこぼれ球を押し込んで追いつくと、さらに76分、クロスから酒井。再びリードを奪うが、79分、またも追いつかれる。

大荒れの天候の中、死闘とも言うべきゲームは3対3でアディショナルタイムに突入した。誰もが延長戦を覚悟し、ベンチが準備をはじめていたとき、FKのチャンスが巡ってくる。ゴール正面だが、直接狙うか合わせるかの判断には微妙な距離。だが、その少し前の時間帯から、中村監督は相手に心理的プレッシャーをかけるよう「テンポ良く回し、とにかくボックスに入れて相手GKにストレスを与えろ」と指示を出していた。

キッカーの野上拓哉を呼んで「どうする?」と訊ねると「狙います」と答えた。「もし迷う素振りを見せたらケツを叩いてやろうと思ってた。狙うと言ってくれたので『よし』と思った」と、そのときを振り返って指揮官は笑う。

91分、強風も計算ずくで野上の左足から放たれた緩いキックは、風に押されながら直接ゴールへと吸い込まれた。試合前に指揮官が言った「最高のシチュエーション」が現実となった、あまりにも劇的な結末だった。

 

■コンプレックスを自らはねのけて

U-15時代から「谷間の世代」と呼ばれてきたチームが、自らの力でコンプレックスをはねのけて勝ち得た、全国行きの切符。このようにして身につけた強さは、間違いなく本物になる。

「(中畑)雄太が離脱してから自信をなくしたように、サニックス杯やPUMA CUPの頃には出来ていたことが出来なくなっていた。ひとりひとりは頑張ってるんだけど、ピッチ内で強くリーダーシップを取れる選手がなかなかいない。だから3年生たちにハッパをかけたんです。お前らずっと試合に出てたけど、雄太におんぶに抱っこだったのかって」

自らも戦力のやり繰りに腐心してきた中村監督は、こういった試合をものに出来たことにチームの成長を感じていると笑顔を見せた。

劇的決勝弾となったFKについて「曲げたの? 曲がったの?」と訊ねられ「曲がりました」と笑う正直者の野上は「去年は予選敗退だったので、今年こそは決勝トーナメントに進めるよう、いまから切り替えて準備します」と言う。

逆転された直後に渾身のゴールを挙げ、チームにあきらめない気持ちをもたらした酒井は「去年も群馬は暑かった。また厳しい戦いになると思うけど、先輩たちの記録を超えられるよう力を合わせて頑張ります」と胸を張った。

今後へと勢いのつく勝ちかただ。第40回日本クラブユースサッカー選手権は7月25日開幕。チームはその前に、まずは6月25日のプレミアリーグ第6節・アウェイ神戸戦に向けてトレーニングを再開している。