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闘う言葉

【前日練習後記者会見】片野坂知宏監督「そういうぶつかり合いもまたサッカーの醍醐味」

 

——試合前日、実際に会場でトレーニングしてみての感想は。

やはり新しく最高のスタジアム、最高のピッチで、最高のシチュエーション。わたしにとっても最後のゲームがこういう素晴らしいスタジアムで出来るのはすごく幸せだし、ピッチも素晴らしく手入れしていただき水も撒いていただいて、すごくいいコンディションで、明日はいいゲームが出来るのではないかという期待をしている。

——公開された部分ではチームの雰囲気のよさが感じられた。

選手もここまで来たし、大分でもトレーニングで準備してきて、しっかりと集中して明日の準備が出来ている。そういう雰囲気を作ってくれて、明日はパワーを出してプレーしてくれると思う。

——大分からも多くのサポーターが来ると思うが。

記事で明日の決勝のチケットが完売したと見た。おそらく浦和さんも同様にたくさんの方が楽しみに来られると思う。大分からも、遠方からたくさん来られるということで、やはり素晴らしい試合をすることが、われわれにとってはすごく大事だし、強豪の浦和さんに対して、ファイナルということを意識しすぎず、自分たちらしいサッカーを思い切って躍動し表現できるかが大事。そのためにサポーターも力を貸してくれると思う。その期待に応えられるよう、明日は思い切ってプレーしたい。

——2008年ナビスコ決勝やJ1昇格プレーオフ決勝など、大分の歴史の中では国立競技場での決勝にいい思い出があると思う。片野坂監督もこの舞台に立つにあたり。

本当に、トリニータの歴史を語ると紆余曲折、素晴らしい思い出もあれば悔しい思い出もあって、わたし自身が2016年から監督をさせていただく中で、J3というファン、サポーターに悔しい思いをさせていて、そこからなんとかJ1に上がることが出来て、今年はJ1で3年目。またJ2降格ということになってしまって、わたし自身も悔しいし残念。そういうときに、このトリニータというクラブが、これまでも昇格や降格を経験し、J3でも戦えばナビスコカップでタイトルも獲った。またこうやって天皇杯という素晴らしい大会で星をつけるチャンスを得たということも、また今季、J2降格が決まった中でここまで来れたというのは、まずは選手が本当にひとつひとつの目の前の試合に向けてしっかりと準備し、持っているものを出して戦ってくれたからこそ。明日のメンバー以外の選手も含めて「トリニータのために」という思いでやってくれたからこそだと思う。

それはわたしが監督になったからというわけではなく、これまでもトリニータというチームが、カラーとして本当にひたむきに最後まであきらめず、自分の持っているものを出し切るプレースタイルを重要視していたし、とにかくあきらめずに励みになるゲームをということをチームの理念としてやってきていた。その中で、今季はJ2降格という残念な思いをさせた中でも、こうして決勝戦まで駒を進めて素晴らしい試合が出来るところまで、選手が奮起してくれた。そういう伝統のいろんなものが重なった中で、明日はそういう思いを選手はピッチで表現してくれると思うし、これでまた素晴らしい成果を挙げることが出来れば、新たな歴史を刻むことが出来る。降格チームが天皇杯優勝するということは、今後もいろんな大会のいろんな状況、いろんなことがあると思うが、地方のクラブにとっても、こういうことが出来るということを示せれば最高で、そういう結果を求めて、明日はしっかり頑張りたい。

——歴史を作るという点では、J2からACL出場という可能性が見えてきている中では。

選手もそれぞれがどういう思いでプレーするかというのはあるが、J2からアジアということもいままでにないこと。やはり大会を勝って、J2だろうがJ1だろうがACL出場権を得られるチャンスをもらっているので、そうなったときには大分という土地、大分トリニータというクラブがどういうサッカーをするか、またアジアに向けても発信していくことが、来年は期待される。J2のリーグでも戦えるぞということを、おそらく来季は示してくれると思う。J1でなくてはならないというわけではなく、J2のチームでも戦えるということを、明日の決勝戦に勝ってしっかりと出場権を得た中で、また来季にそういう期待をして楽しみにしたい。

——明日は6シーズン率いてきた大分でのラストゲーム。いまの心境は特別か、いつもと変わらないか。

いろんな思いがあるかなと思う。やはり最後の試合というのもあるし、天皇杯のファイナルということもあるし。ただ、本当にこれまでもそうだったが、僕自身がとにかく目の前の試合に対してしっかりと準備して勝てるゲームを出来るようにということをやってきて、そのルーティンというか自分が目の前の試合に対して臨まなくてはならない戦い方は変わらないところだと思う。

ただ、スタジアムが素晴らしい国立競技場でもあるし、芝生も非常によく、注目の集まる今季最後の公式戦。ここまでわれわれがサッカーをできるという喜びもあるし、わたし自身もそういうファイナルを戦えるという幸せも感じている。

そういった思いはすごくあるが、サッカーになれば、浦和さんに対して準備してきたことを選手が臆せずどれだけ躍動できるかということが大事。そういうところで勝てるゲームを集中してやりたい。

——6シーズン、ブレずにスタイルを築く中で戦術バリエーションを増やしてきた。明日は相手がロドリゲス監督の浦和。いろいろな駆け引きの繰り広げられる楽しい試合になりそうか。

はい、そうなればいいなと思う。やはり浦和さんもすごくいいチームだし、ロドリゲス監督も素晴らしいサッカーをされる。われわれもそれに対していろいろと相手を見てというところでも、そしてスタイル的にもしっかりとボールをつないで躍動してほしい。浦和さんも力と勢いのあるチームで、個々の能力が高い選手も揃っている。準決勝同様、浦和さんもタイトルを獲りACL出場権を狙っていて、阿部選手が引退したり、退団される選手がいる中で、勝って終わりたいというのはわれわれと同じだと思うし、そういうぶつかり合いもまたサッカーの醍醐味だと思う。本当に素晴らしい試合をすることが大事かなと。もちろん結果として勝てることがベストだが、とにかくそういうチャレンジを、90分になるか120分になるかPK戦まで行くか、どういうふうになるかわからないが、準備して、いい試合をお見せできたらと思う。

——このチームは一体感を重視してきた。レギュレーションの都合で天皇杯に出場できない選手たちはどういったふうに向き合ってきたか。

本当にこれは大会のレギュレーションなのでどうしようも出来ないことで、われわれだけでなく他のチームもそういうことで、出られる選手だけでやられている。夏に入ってくれた選手もこの大会に出場して一緒にプレーできて喜びあえればというところはあるのだが、残念ながら出場することが出来ない。

それでも普段のトレーニングで、リーグ戦が終わったあとの天皇杯に向けてというところでも、しっかりとファイティングポーズを取ってくれて、トレーニングやゲーム形式の練習などでもしっかりとプレーしてくれた。そういうプロフェッショナルな姿勢というものを、試合に出ているメンバーもよく感じている。その4人の選手以外にも、明日の決勝戦には18人しかエントリーできないので、他のメンバーも目の前の試合に対してチームのためにという思いを出してトレーニングしてくれたので、すごくいい雰囲気を作ることが出来た。そのおかげで準決勝l、決勝と駒を進めることが出来たと思う。

リーグ戦の結果は出なかったが、天皇杯で、そういった思いを、出る選手がしっかりとプレーで返してくれると思うし、出し切ってやってくれると思う。そういう思いをわたし自身も期待するし、大事なところだと思っている。

——大分の「三位一体」とはどういうもので、それはチームやクラブにどのように作用しているか。

わたしが監督に就任してからもそうだし、それ以前も、県民・行政・企業の三位一体。ファン・サポーターのおかげ、スポンサー企業の方々、行政の方々の三位一体という言葉がある。それだけでなく、本当にいろんな方がトリニータを応援してくださりサポートしてくださり関わってくださっている。もう「三位」だけでなく「何位」なのか、何位という言い方がどうなのか、すみませんそれはちょっとわからないが(笑)、たくさんの方のおかげでわれわれトリニータはサッカーが出来ている。僕は選手でもクラブに入っても監督としても、そういう思いは感じていた。そういう方々のおかげということを、われわれはやはりプレーで恩返ししなくてはならない。プレーで励みになるゲームをし、喜んでもらえることが大事だと思ってシミュレートして戦ってきた。

それはどういう状況でも、そしてこれからも、大分トリニータとして戦う中で、選手もクラブもそういう姿勢、三位一体の意味をしっかりと感じた中でやっていってほしいし、それが大分トリニータの強さになっていってほしいと思う。