片野坂知宏監督【記者会見】「徐々に実感が湧いてくるんじゃないかなと思います」
まずは、山形さんのクラブ関係者の方々、選手・スタッフのみなさま、サポーターの方々、われわれのJ1昇格が懸かっているときに、最終戦ということもあったんですけど、温かく見守っていただき本当に感謝いたします。われわれにとってはアウェイの地で、山形さんにとっては悔しい思いだと思いますけど、セレモニーがある中でもわれわれに時間を与えていただいたことに、御礼を言いたいと思います。
そして、大分トリニータファミリーの、ファン・サポーターの方、スポンサーさま、行政・企業など本当に多くの方々のご支援・ご声援のおかげで、J1昇格をつかみ取ることができました。本当にありがとうございます。
やはりJ3降格からこれまでは簡単ではなかったですし、いろんな方々のサポートなくしては、昇格は達成できなかったと感じています。
ゲームの方は、おそらく山形さんも[3-4-2-1]のシステムでミラーゲームになることは予想していました。メンバー的にもどういう選手を使ってくるか予想しづらいところがあったのですが、ほぼ想定内だった中で、DFの栗山選手のところを坂井達弥選手で来たところは、少し予想と違いました。ただ、戦術的にはいつもと同じようにメリハリをつけてやってこられたと思います。前からプレスに来るか、構えてくるか、そういうところをしっかり状況判断して自分たちの戦い方ができるようにボールを動かし、前半は落ち着いてプレーできたと思います。そういう中から先制点が取れたこと。山形さんの守備を崩すのは簡単ではないですし、得点を前半から挙げることができたことは、大きな力となり勇気となったんじゃないかと思います。
ただ、追加点を取ることができなかった。最後のああいうところで相手の勢いを受けてしまい、押し込まれて、素晴らしいミドルシュートから同点に追いつかれ、厳しい試合になったなと感じました。アディショナルタイムになったところで、選手は最後まで粘り強く切らさずに戦ってくれたと思いますが、一瞬のところで後手に回るとああいう失点になる。そういうところは来季J1でもそういうシーンがおそらくあると思うので、教訓にして、最後まで粘り強く切らさない守備、そして追加点を挙げられる攻撃を、また積み上げていかなくてはならないと、今日のゲームでも感じました。それを来季以降も修正できるようにやっていかなくてはならないと思います。
最終戦、引き分けだったんですけど、素晴らしい成果を、選手のおかげで、そしてクラブスタッフみなさんのおかげでつかみ取ることができました。本当にうれしく思いますし、自分の中でもほっとしているというか、……うれしい、です。
——試合終了間際、どの時点で他会場の情報を入れていたのですか。
情報は80分くらいに一応、コーチに聞いて、町田とヴェルディが1-1だということを知りました。ただ、アディショナルタイムを含めてどちらかが行ければ(大分の)昇格はないという状況だったので、同点に追いつかれてもなんとか2点目を入れたいという思いがありました。でもバランスを崩して勝点1さえ落としてしまうといけないというところではすごく難しいゲーム展開で、時間もそれほどなかった中で、バランスを崩さないように、落ち着いてやるようにと選手に話していました。
——あくまでもアグレッシブで攻撃的なサッカーを貫いてJ1昇格を果たしましたが、その哲学はどこから。
わたしはたくさんの素晴らしい監督の下で、攻撃もそうですけど守備のほうでも学ばせていただきました。それを参考にしながら使い分けてチャレンジするようにしました。そしてやはり勝点3を取るためには、得点を取らなくてはならない。得点を取るための戦い方というのも、ある程度こちらが提示する戦術に関しては、今季スタート当時よりも現在になって、またバリエーションが多くできて、それを選手が理解し、狙いを合わせてやってくれました。その成果が得点につながっているんじゃないかと思います。
決して守備をおそろかにしているわけではなく、失点しない粘り強い守備はずっとこれまでも続けてやっていました。攻守両面が非常に大事になる中で、得点を増やせば勝点も増えていくし、守備のほうも全員で粘り強く守れば必ず勝点1は取れるので、そういうことを選手たちに話しながら取り組んだ成果だと思います。
——就任時のチームの印象と、ここまでの難しさとは。
わたしが就任を決めた時点では次のシーズンにJ2かJ3かどちらになるかわからない状況だったんですけど、残念ながらJ3に降格してしまいました。ただ、それまでのトリニータのサッカーを見て、わたしが監督になったときに描ける絵というのがありまして、それにチャレンジすることによってもっとよくなるのではないかということで決断しました。
スタート時は3バックではなく、それまでトリニータがやってきた4-4-2のシステムのやり方の中で、アイデアを出してJ3でチャレンジしました。攻撃のところで組み立てや剥がし方、チャンスの作り方については、過去にいろんな監督の下でやらせていただいたときに学んだことを参考にしながらトライすることで、きっとよくなるんじゃないかと。
ただ、J3で対戦する相手も失うものなくアグレッシブに戦ってきますし、われわれは1年でも早く昇格しなくてはならないというプレッシャーの中でした。そのプレッシャーは、今季J1昇格を目指すプレッシャーよりも大変でしたが、なんとかみなさんのおかげで一体感をもって1年でJ2に復帰することができ、昨季のJ2は残留を目標にチャレンジすることにして、なんとか1桁順位になりました。そこから、プレーオフ圏までの勝点4差を埋めるための今季、選手層を含めてクラブと話し合い、戦術理解度の高い選手を補強してもらって、選手層が厚くなりいい競争が生まれることによってチーム力が上がり、最終節でJ1昇格という結果を得られたんじゃないかと思います。
——この3年間を振り返っていかがですか。
僕ひとりではできなかったなと。ファン・サポーターの方々のご声援、スポンサーさま、行政・企業のご支援、みなさまのご協力があって、クラブ、チームスタッフを含めて本当にわたしをサポートしていただきました。なによりも選手が僕のことを信じて、この3年間よくついてきてくれた。今季は特にメンバーを変えたり先発を変えたり、選手にとっては「なんで試合に出られないんだ」と、我慢もしたし悔しい思いもしながら、「トリニータのために」とやってくれたと思います。
それがこういう具体的な結果として出たことが報われて、すごくよかったなと思います。3年間、結果から見れば着実にステップアップしてきていると思いますし、来季はJ1で戦う中で、トリニータがどういうふうに戦うかということは、またこれまでをしっかり振り返った中で、やっていかなくてはならないと思います。
——監督ご自身の来季については。
契約のことなので、まだはっきりとここで申し上げることはできないんですけど、J1に上げることができたのは素晴らしい成果だと思いますし、いまのこのトリニータのサッカーがJ1で通用するかというチャレンジには、非常に興味がありますが、いまの時点でははっきりと申し上げることはできません。
——ロッカールームで選手たちにどう声をかけましたか。
まずはおめでとうと伝えました。今シーズン本当によく頑張ってくれた、素晴らしい成果を自分たちでつかみ取ってくれたと言いました。そして大分に残っている選手、クラブスタッフ、チームスタッフ、本当にみなさんのおかげだと。感謝の心をもたなくてはならないし、そういう方々のおかげがあったからこそ、われわれはこういうことを達成することができたんだよ、それを忘れないように今後もそういう思いでやらなくてはならないよと話をしました。
——J3からJ2に昇格するときは号泣していましたが、今日は笑顔ですね。
あのー、ええ、泣きましたけどね(笑)。嬉し泣きしました。ただ、“カメ野坂”にはならなかったですけど(笑)。そういう余裕もなかったというか、試合が終わったときにどうなるのかなというのがあったので。そしていまもまだ、J1昇格できたという実感がそんなにないんです。本当は勝って自力で決めたかったのが本音で、それはできなかったんですけど、こうして昇格できたことは、うれしく思います。
今季の目標はあくまで勝点70・プレーオフ圏内の6位だったので、昇格できたのは素晴らしい成果ではあると思うんですけど、J3からJ2に上がらなくてはならないというプレッシャーと同じくらいのプレッシャーではなかったです。わたしは最後までこういうふうになると予想していましたし、ひとつひとつということをつねに考えて、プレーオフに行くことも覚悟していました。でも、プレーオフに回ったとしてもそれは今季のわれわれの目標でもありましたし、とにかくチャレンジするしかないと。
絶対に昇格しなくてはならないような、望まれるようにできればよかったんですけど、あっ、できたんですけど(笑)、そういうプレッシャーというか、それが違うんですよね。なので、笑顔で終われたというか、うれしい気持ちになっていると思います。これから大分に帰ってチームスタッフのみんなと会ったり、ファン・サポーターの方々と一緒に喜びあったり、そういうことができるうちに、徐々に実感が湧いてくるんじゃないかなと思います。今シーズン、ありがとうございました。